ディープラーニングはスカイネットの夢をみるか

投稿日:2019年04月15日 08時17分31秒

ディープラーニングは3層以上のニューラルネットワークである。
現在相当な資金がディープラーニングに投入されているため相応の成果が得られることであろう。
特に視覚認識、音声認識、画像処理の分野では顕著な成果が得られるものと考えられる。
その根拠はADABootingの有用性にある。カメラの顔認識などで一躍有用性を示したその手法の先にディープラーニングがあるからである。ADABootingは有象無象の雑多な単純アルゴリズムを寄せ集めてそれぞれの有効性を教師付き機械学習させることで有用な結果を得られる所にある。目は他の部分より黒いと思う、鼻は他より光ってるかも等有用かどうか不明なアルゴリズムを鍋に入れてごった煮にする。そこからどうも味がよろしくなさそうなアルゴリズムをアク取りし有用なアルゴリズムを残すことで良好な結果が得られる。
ディープラーニングでは更にその有象無象のアルゴリズムをニューラルネットワークの結線として表現することでニューロ構造と莫大な教師データ、計算リソースを突っ込む事で良好な結果が得られる。この2つのアプローチはプログラマが知識を投入しなくても結果が得られそうという点で異なる。よってディープラーニングは多くの分野で結果を残すだろうと想像される。
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ただしこれが実用となるかというとかなり疑問がある。ニューラルネットワークというのは基本分類装置である。状態の空間に任意の超平面を作成して切り分ける。その結果により良し悪しが決まり超平面を修正する。この平面の可視化なども行われるだろうが結果としては「なんだか分からないがうまく出来た」というものが生成される可能性が高い。また超平面が引けない状況も存在する。現在の学習方法は基本山登りである。よって微小差異によって状況が改善しないとそこに平面は設定できない。したがって問題空間が崖になっている場合、例えばある瞬間に水が沸騰するとか急激な変化を伴う問題空間や組み合わせ問題に関しては恐らく効果を発揮しないと考えられる。

例として自律運行自動車にこれを採用することを考えよう。視覚から停止、走行等の情報を取得し運行する。ところがある場所で人の姿を書いた絵が出てきたとしよう。ニューラルネットワークは三次元立体視するか分からないが今まで学習しなかった事に出くわすことは十分ありうる。ここでそのまま走行したら実際にはボディペインティングだった人間を轢いてしまうかもしれないし、または人の形に見えるもので急停車してしまうかもしれない。
これらは決定されたアルゴリズムによる正当な判断だが、その判断が間違ってるかどうかは今までどのような学習をしてきたかに依存してしまう。その場合その責任の所在が不明になってしまう。

先日コンピュータVSプロ棋士の対戦で機械の不備を突いて人間が勝利したが、予め不備が分かっていればまだしもニューラルネットワークによる学習の場合には動作自体もブラックボックスになる。これでは普及は難しい。
よって人工知能がお金になる要件としては機械の体があってその補佐としての機械の認知というのが当面の限界と考える。
その適用範囲は当面は24時間監視、部分的な投資運用、事務作業、工場における各種認識処理に留まるだろう。

以上単純に述べたが、これはニューラルネットワークの限界であって人工知能の限界ではない事も付記しておく。やはりどの分野でも問題が生じることはあり、逐次自分自身を改善する構造があれば解決されるものである。その時はスカイネット相当の危機は十分にありえる。

早急に必要となるのは人間を守るための良心回路とホワイトボックス人工知能である。

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